アフリカ大陸の東部や南部に生息するアフリカの代表的な野生動物であるヌー。
「ヌーヌー」という鳴き声からヌーと名づけられたと言われていますが、シマウマなどと同様にライオンやヒョウ、ブチハイエナなどアフリカの多くの肉食動物に狩られる主要な草食動物です。
英語で「Wildebeest」と呼ばれるこの動物は、ウシとカモシカの特徴を合わせたような体をしており、別名ウシカモシカとも呼ばれています。
合計120万頭とも170万頭にもの群れをなして水と草を求めて移動する、いわゆるヌーの大移動は非常に有名ですが、その長い道中には危険もいっぱいです。
今回はそんな大移動するヌーの生態や特徴と、ケニアとタンザニアの国境のマラ川を川渡りしているヌーを次から次へと狩るナイルワニの捕食の動画をご紹介します。
ナイルワニの生息地は、主にサハラ砂漠より南のアフリカ大陸の川や湖、湿地帯に生息しており、生息する淡水域において食物連鎖の頂点にたつ最上位捕食者です。
アフリカでは毎年100人以上もの人間が殺されている、見た目通りの非常に危険な野生動物です。
ナイルワニの大きさは、体長は4~5.5m、体重は220~320kgにもなる大きな爬虫類で、川を渡っている動物や水辺で水を飲んでいる動物たちを、噛む力が1~2トンにもなる非常に強い顎の力で水中に引きずり込んでいきます。
そして自分の体を回転させるデスロールで獲物の体を引きちぎって残さずなんでも食べてしまいます。
まさに性格も凶暴かつ残虐そのものの最強プレデター(捕食者)です。
対してヌーはウシ目ウシ科ヌー属に分類される動物で、ヌーの体長は1.5~2.4m、体重は200~270kgほどの中~大型の草食動物です。
ヌーの生息地は、アフリカの東部や南部で、タンザニア、ケニアや南アフリカといった国のサバンナに生息しており、寿命はだいたい20年程度と言われています。
ヌーの生態としては、数十頭から数万頭にもなる大きな群れを作って暮らしていますが、シマウマやインパラなど他の草食動物が混じっていることが多くみられます。
特にシマウマとヌーの群れが一緒に生活し、また小雨期に見られるケニアのマサイマラ国立公園からタンザニアのセレンゲティ国立公園への大移動の際には、一緒に行動することが多くみられます。
このヌーとシマウマの共生については、それぞれの短所を補いながら恐ろしい肉食動物から身を守るための協力関係を築いていると言われています。
視力は悪いですが嗅覚が優れており、はるか遠くの雨の匂いも嗅ぎ分けられるヌー、川の中になかなか飛び込めず、川渡りの決心がつかない臆病な性格のヌーを積極的にリードする強い性格を持ったシマウマ、両者がそれぞれの長所で共生協力関係を築いて相互扶助のようになっているようです。
また同じ草食動物ながら食べ物が被らないため、両者が食料を巡って争う事はないようです。
ヌーの群れはシマウマなど他の草食動物とともに、水と草を求めてタンザニアのセレンゲティ国立公園とケニアのマサイマラ国立公園の1,500kmにもなる距離を大移動をします。
その間にはケニアとタンザニアの国境付近を蛇行して流れているマラ川を何度か川渡りしなければなりませんが、このマラ川には凶暴な恐ろしいナイルワニがヌーを食事にしようと手ぐすね引いて待ち構えています。
またにナイルワニに捕食される以外にも、毎年6000頭ほどが川を渡り切れず溺死しています。
ですが溺死したヌーはワニやアフリカハゲコウ、ハゲワシといった動物の餌になるほかにも、その骨がマラ川の貴重な栄養源となっており自然環境に役立っていることがわかっています。
実はヌーの骨の表面は微生物の膜で覆われており、これが7年もの月日をかけてゆっくり分解しマラ川に生息する魚のエサになっているのです。
1年間に溺死するヌーから出る栄養分はシロナガスクジラ10頭分にもなります。
ワニに捕食されたり溺死したりするヌーはかわいそうな気もしますが、その一部の犠牲のおかげでナイルワニやハゲコウなど他の生物の命が生かされ、かつマラ川流域の食物連鎖に役に立っているというのはなんとも興味深い話です。
今回は大移動中にマラ川を川渡りしているヌーの群れが次々とナイルワニに襲われている捕食動画です。
水辺の最強捕食者であるナイルワニの豪快な狩りの様子をご覧ください。