イリエワニはクロコダイル科クロコダイル属に属するワニのうち、アジアオーストラリア系統に分類される最大のワニです。
イリエワニは、ナイルワニと並んで最強最大の凶暴なワニとして、時には人間が襲われ「人食いワニ」としての逸話も多数残されています。
イリエワニはアジアの熱帯地域に比較的広範囲にわたって生息しています。
アジア大陸では、インド南東からバングラディシュ、ミャンマー、タイ、マレーシア、カンボジアからベトナムにかけての沿岸部、
東南アジアでは、インドネシア、フィリピン、ブルネイなどの島々、
オセアニアでは、パプアニューギニア、オーストラリアの北部沿岸部などに生息しています。
イリエワニは他のワニと違って海を泳いで移動できるという生態があるため、生息域を拡大することができ、中でもオーストラリア北部へは近年になって生息地を広げたと考えらています。英語でもsaltwater crocodileと呼ばれます。
日本でも奄美大島や八丈島、西表島でイリエワニが漂着した記録が残っており、江戸時代~明治時代にかけて生息していたのではないかという指摘もあります。
イリエワニは主に入江や三角州のマングローブ、磯、干潟など「汽水域」と呼ばれる淡水と海水が混じった海岸エリアに生息し、これは「入江鰐」という和名の由来になっています。
また、河川・湖・池沼などの淡水に生息している個体もいます。
イリエワニのオスの大きさは、体長4~6mぐらいとなり、体重は400~800kgほどとなります。中には1トンを超えるものもあります。
最大では、全長8.5mにもなるイリエワニがナショナルジオグラフィックで記録されています。
イリエワニの寿命は非常に長く、だいたい70年ぐらいとなります。
ナイルワニも70~100年くらいと言われていますので、凶暴な人食いワニとして双璧をなすクロコダイルは総じて長寿ですね。
イリエワニはもちろん肉食性の動物ですので、魚類、両生類、哺乳類、鳥類、甲殻類などとにかくなんでもその力強いあごの力でかみ砕いて食べます。
イリエワニは動物の中でも噛む力は最大といわれており、人間のおよそ48倍もあります。
人食いワニとしてのイリエワニの恐ろしさを伝える話としては、第二次世界大戦中の日本軍の逸話があります。
太平洋戦争におけるラムリー島の戦いにおいて、撤退中の日本軍がイリエワニの群れに襲われ、数百人~数千人が犠牲になったといわれています。
この話は海外でも有名な話で、「ワニの犠牲になった最大の死亡事故」としてギネスブックにも掲載されていますが、この話を裏付ける明確な歴史的史料は残っていないため、真偽のほどは定かではありません。
また2011年にはフィリピンのミンダナオ島で、12歳の少女と農民2名を捕食したとみられる人食いのイリエワニ「ロロン」が捕獲されました。
このロロンは、体長6.17m、体重は1,075kgにもなる巨大ワニで、このイリエワニは「世界最大の捕獲されたワニ」として、ギネスブックに認定されています。
イリエワニは生息域においてまさに食物連鎖のピラミッドの頂点に君臨する頂点捕食者で、自然界には天敵はいません(共食いはあります)。
生身の人間など到底太刀打ちできないですが、2016年に東京の品川区で全長8メートルにもなるイリエワニが捕獲されたとツイッターを中心にネット上で騒然となりました。
しかし、これは撮影用の小道具としての模型だったのではないかという事ですぐに騒ぎは収束しました。
さて、今回はオーストラリア北部の人気観光地でもあるノーザンテリトリーというイリエワニの生息地で撮影された、ワニの捕食動画です。
カンガルーの仲間である有袋類のワラビーが池のほとりで水を飲んでいたところ、水中に潜ってまるで忍者のように音も立てず近づく大きなイリエワニ。
突然水の中から飛び出してきたと思ったら、その巨体の大きな口にはしっかりワラビーを咥えてます。
そのまま激しく揺さぶるとワラビーは見る影もないほどズタボロに切り裂かれていきます。
まさに一瞬の出来事ですが、巨大なイリエワニのその大きさ、凶暴さなどがよくわかる、イリエワニの捕食動画です。