細く長い鋭くとがったツノを持つイッカク。
その神秘的な姿は、伝説上の生き物のように長い間幻の珍獣と言われてきました。
イッカクはクジラ目ハクジラ亜目イッカク科に属する哺乳類で、シロイルカ(ベルーガ)の近縁種です。
その特徴的な角をもつイッカクの泳ぐ様子をとらえた珍しい動画です。
イッカクの生息地は、北極海域(カナダ、ロシア、グリーンランド)の北緯70度以北の海域です。
英語では、Narwhal、Unicorn whaleと呼ばれています。ユニコーンクジラなどそのものズバリです。
クジラの仲間であるイッカクの体長は、オスが4.7m(ツノは除く)、メスは4.0mほど、オスの体重は1.6t、メスの体重は900g程度となります。
基本的にオスのみに生えているツノは3mになる個体もいますが、実はこのツノは上あごの左の歯が伸びたもので「牙」なんです。
中が空洞となっていて以外に脆いこの牙は、神経系の集合体であることが判明し、高度な感覚器として気温や温度の変化を敏感に感じ取っている他、魚など獲物を狩る際にも使用されている事も確認されています。
イッカクの牙は脆くゾウのように一度折れてしまうと再生しないため、オス同士が牙を使って戦い合うようなことはせず、オス同士が牙の大きさを競い合ったりしてメスにアピールし、オスの序列を決めています。
序列の高いオスはたくさんのメスを獲得でき、ハーレムを形成することができます。
イッカクは潜水が得意で、水深1000m以上、20分程度は潜っていることができます。
主に魚類(カレイ、タラ、サケ、ニシンなど)を餌としますが、イカ、カニ、エビ、タコなど生息している海域によって食性が異なってきます。
イッカクは5~12匹ぐらいの群れを作って活動する生物です。
イルカのように音を使って群れでコミュニケーションを取る知能の高い動物でもあり、狩りの際も音を使いチームワークでハンティングします。
鼻の奥から出した音を獲物に当て、その反響音によって暗い海の仲でも獲物の位置を知ることができるのです。
まるでコウモリのようですね。
イッカクの天敵は、北極地域の食物連鎖の頂点に立つシャチやホッキョクグマですが、彼らと遭遇したイッカクは戦うことなく逃げるしかありません。
かつて中世のヨーロッパでは、ユニコーンの角には解毒作用があると考えられていたため、イヌイットから流通してきたイッカクのツノを 「伝説の動物、一角獣(ユニコーン)の角だ」と偽って売買されていました。
また江戸時代の日本においても、サイの角と同様に解熱や鎮静効果のある漢方薬としてイッカクのツノが高値で流通していました。
残念ながら日本でイッカクを見られる水族館はいまのところありません。
日本だけでなく、世界中探してもイッカクを飼育している水族館はありません。
そんな幻の珍獣、野生のイッカクの特徴がよくわかる動画です。