水族館のショーでもたびたび登場する知能の高いシャチとオタリア。
飼育員さんの合図に従ってジャンプしたりボールやフラフープを使った芸をしたりと、パフォーマンスで観客を喜ばせている姿がとてもかわいい動物です。
シャチもオタリアも芸を覚えさせられるほど知能の高い動物ですが、野生では捕食する側と捕食される側という側面も持っています。
今回は南米のパタゴニア地方で繰り広げられている、知能の高いシャチの中でも極めて珍しいオタリア狩りの動画や生態、特徴などをご紹介したいと思います。
シャチはクジラ目マイルカ科シャチ属に分類される海洋哺乳類です。
サメをも捕食してしまう強すぎる肉食のシャチには自然界に天敵はおらず、「海の王者」として生態系の頂点に君臨するシャチの生息地は世界中の海に広がっています。
シャチは体も非常に大きく、その大きさは体長8~10m、体重は6トン以上にもなり、陸上最大動物のアフリカゾウよりも大きい体のサイズをしています。
さらに野生での寿命も50~80年にもなる長寿の動物です。
対してオタリアは、アシカ科オタリア属の海洋哺乳類で、その生息地はチリ、ペルー、ウルグアイ、アルゼンチンなど南アメリカの沿岸に生息している、パタゴニア地方を代表する野生動物です。
オタリアの大きさは、オスの体長は2.5m、体重は350kgほど、メスはオスよりも小さく体長2m、体重120kgほどとなります。
オタリアの特徴として、オスにはライオンのように立派なたてがみがあります。
アシカの仲間を英語では「sea lion」と呼びますが、シーライオンという名前の由来となったのがライオンのようなたてがみを持つこのオタリアに由来しているのです。
知能が高いシャチは社会性が高い群れを作り、群れ独自の言語を使ってお互いにコミュニケーションを取りながら群れの仲間同士で連携して狩りを行います。
狩りの際、イルカなどと同様に反響定位(エコロケーション)を用い、獲物の位置や大きさなどを正確に把握することができます。
シャチは、魚、アザラシやアシカ、ペンギンやホッキョクグマ、さらには人間にとっては恐ろしいホオジロザメさえも餌にしてしまいます。
さらにシャチは自分たちよりもはるかに体の大きいクジラさえも襲って餌としてしまいますが、クジラを襲う時はシャチたちが交代でクジラの真上に乗って海面で呼吸ができないようにし溺死させてしまうのです。
巨大な体に高い頭脳、そしてチームワーク抜群の群れで狩りをするシャチは、まさに敵なしの海の最強王者と呼ぶにふさわしい生物です。
アシカの仲間であるオタリアも肉食の海獣で、魚やイカのほか、ペンギンも捕食し食べてしまいます。
オタリアの野生での寿命は20年ほど、水族館などの飼育環境では30年程度となります。
陸上でも生活するオタリアは赤ちゃんがピューマに捕食されてしまう事があります。
海中での天敵はやはりシャチです。
巨大な体を持つシャチの生態として、特筆すべきはその高い知能と優れた運動能力があります。
非常に優れたシャチの泳ぎの能力ですが、その遊泳速度は最高速度の時速65~80kmにも達しまさに世界最速級の遊泳能力を持っています。
またシャチの群れはそれぞれ固有の音を持っており、コミュニケーションにも反響定位(エコロケーション)を使用し仲間同士の密な関係の構築が可能となっています。
一方オタリアの生態ですが、一夫多妻制の群れを作って暮らしており、1頭のオスと10頭前後のメスとその子どもたちからなるハーレムを形成します。
メスのオタリアは360日程度の妊娠期間を経て1回の出産で1匹の子どもを出産します。
オタリアのメスは生後1年ほどは母乳で子育てしますが、生まれた赤ちゃんは生後1か月ほどで海の浅瀬で水遊びするようになります。
今回の動画は、シャチが海辺のオタリアの赤ちゃんたちに猛チャージをかけてを捕食する「オルカアタック」の動画となります。
シャチは時速50キロものスピードで砂浜に乗り上げ狩りをするので、一歩間違えればシャチも座礁して死んでしまう、まさに命がけの狩りです。
このオルカアタックは1年間に10日ほどしか見られない非常にレアな狩りの様子ですが、潮の満ち引きや風など自然界の環境を分析、判断して行う、知能の高いシャチにとっても非常に難易度の高い狩りなのです。
この命がけの狩りは世界中でこのパタゴニアのシャチにしか見られず、母親のシャチから子どもへと代々受け継がれているスペシャルな技なのです。
一歩間違えれば自らも命を落としかねない危険なオルカアタックですが、海と陸の境がまさに命の攻防線になっているとりわけ高い知能を持つシャチとオタリアとの野生での命の攻防をご覧ください。