知能が非常に高く水族館のイルカショーでもおなじみの海洋哺乳類、バンドウイルカ。
人間の次に知能が高いとも言われているイルカは、その頭の良さゆえ様々な芸を披露してくれ、またかわいらしい顔立ちと鳴き声、好奇心旺盛な性格で人間にも気軽に近寄ってコミュニケーションを取る様子から、大人にも子供にも人気の動物となっています。
そんな人気のバンドウイルカですが、野生での生態や特徴についても詳しくご紹介したいと思います。
ハクジラ亜目マイルカ科ハンドウイルカ属に属するバンドウイルカは、別名ハンドウイルカとも呼ばれており、英語での名前は「Bottlenose Dolphin」となります。
バンドウイルカ属には、ほかにオーストラリアやインド洋に生息するミナミバンドウイルカもいます。
バンドウイルカの生息地は、温帯や熱帯海域の沿岸や海域に生息しており、南極や北極圏など寒い地域には生息していません。
世界中の海域に生息するバンドウイルカですが、海岸近くに生息する沿岸性と沖合で生息する外洋性の2つのタイプがいます。
バンドウイルカの身体的な特徴は、体長は2~4m、体重は150~650kg程度となり、生息地によって体の大きさはかなり異なってきます。
頭の上にある噴気孔で呼吸するのはクジラと同じです。
生まれたばかりの赤ちゃんイルカは、体長は1メートルほど、体重は15~30kgほどとなります。
バンドウイルカには、上下合わせて80~100本もの尖った歯が生えています。
生まれたときは人間と同じで歯は生えていませんが、徐々に生えてきた歯は一生そのままで永久歯なんです。
しかもイルカは虫歯にはならないようです。
またバンドウイルカの寿命は、20~40年ほどで、ストレスの多いオスはメスよりも寿命が短い傾向があります。
バンドウイルカの身体的な特徴としては、「泳ぎの達人」と呼ばれるほど遊泳能力が高く、その泳ぐ速度は時速50kmくらいになります。
瞬間的には時速70kmもの速度で泳げるといわれています。
生物分類上クジラとイルカの厳密な違いはなく、大人の体長でだいたい4mを境としてクジラとイルカを区別していることが多いのですが、コマッコウやゴンドウクジラのように4m以下でもクジラとみなされる種類もいれば、シロイルカのように5mほどの大きさでもイルカと呼ばれる事もあります。
バンドウイルカの食べ物は、小さい魚やイカ、タコ、カニなどの甲殻類で、1日におよそ4~15kgほどの食事量となります。
鋭い歯を持っていますが獲物をかみ砕くことはせず、そのまま飲み込むことが特徴です。
群れの仲間と協力し合って効率よく狩りを行います。
またバンドウイルカは餌となる獲物を探し出すのに音波を使用しますが、これは反響定位やエコーロケーションと呼ばれるもので潜水艦のソナーや魚群探知機と同じような仕組みで、
イルカが発生した音波が魚に反射した際のその反射音の間隔や大きさ、方向などを聞き分けることによって、餌となる魚の位置や距離を性格に測定することが可能となります。
バンドウイルカの生態としては通常、10頭前後のポッドと呼ばれる群れを作って暮らしていることが特徴で、このポッドはメスとその子供たちから構成されています。
特に外洋性のバンドウイルカは、複数のポッドが合流して100頭もの群れになることもあり、集団でジャンプしたり、波にのって泳いだり、かなり開放的な社会構造で生活している様子が報告されています。
人懐こく好奇心旺盛な性格のバンドウイルカですが、攻撃的な一面も持ち合わせており、危害を加えようとしてくるサメに対してや繁殖期のオス同士などは非常に好戦的になります。
獰猛なホオジロザメ相手に強烈な頭突きを食らわして単独で殺害したというケースも多数見受けられます。
また高い知能を持つイルカは仲間とのコミュニケーションにも音波を用いますが、なんと30種類もの識別可能な音を使い分けてコミュニケーションを取っているようです。
言語に相当する伝達手段を持っていることが確認されていますが、これはまだ「イルカ語」としては確認できていないようですが、これから研究が進めば「イルカ語」が解明されていくのかもしれませんね。
さらに、餌を探すのに道具を使用している野生のバンドウイルカの様子も報告されており、イルカの知能の高さがわかる事例となっています。
バンドウイルカの繁殖の生態ですが、オスがメスにキスをしたりあまがみするような求愛行動もみられます。
長い前戯の後にオスとメスは交尾をするのですが、10秒から30秒くらいの交尾を数分の間隔をおいて何度も行います。
またバンドウイルカは通常1回の出産で1頭の子どもを産みますが、出産の際には「助産婦」のイルカが出産を手助けする事もあります。
このような生態からも、バンドウイルカの知能の高さだけでなく高い社会性も見て取れますね。
そんなバンドウイルカの自然界の天敵は、イタチザメ、ドタブカ、オオメジロザメなどの大型のサメとなりますが、子供のイルカ以外に捕食されることはあまりないようです。
大人のイルカの攻撃力は非常に高いので、サメといえどもイルカに返り討ちにあって命を落とす事が多々あるからです。
バンドウイルカは漢字では「坂東海豚」と表記されますが、別名であるハンドウイルカは漢字では「半道海豚」と表記され、イルカともクジラともつかない中間の大きさの半道(中途半端)のイルカであることから、ハンドウイルカと呼ばれるようになったのが名前の由来となったと言われています。
ライオンやトラには白変種であるホワイトライオンにホワイトタイガーがいますが、イルカにも先天的にメラニンが欠乏している遺伝子疾患があるアルビノの個体が生まれることがあり、「シロイルカ」「ピンクイルカ」などがごく稀に見られます。
日本では和歌山県太地町の「くじらの博物館」のみで、「スピカ」と名付けられたアルビノのバンドウイルカを見ることができます。
体重に占める脳の割合が人間に次いで大きいイルカですが、その知能の高さゆえ人間のようないじめもあるようです。
魚をポッドの集団で噛み付き弱らせた挙句食べずにそのまま捨てたり、同種のイルカを集団で噛み付くなどして殺すなど、集団的な暴力行為も見受けられます。
こういった行為はシャチなど他の知能の高い動物にも見られる、仲間同士のコミュニケーションのひとつともなっています。
今回の動画は、アメリカのフロリダ湾の浅瀬で撮影されたバンドウイルカの知能の高さが垣間見れる狩りの様子の動画です。
一匹のバンドウイルカが浅瀬で輪っかを作りその中に魚を閉じ込めます。
そこで逃げ場を失った魚が四方八方へと輪の外に飛び出てきたところを、輪の外で口を開けて待機しているイルカたちが片っ端から空中で捕食していくという、優秀な頭脳と高いチームワークが必要な狩りを行っているのがよくわかる動画です。